金融全般

ハイパーインフレとは?原因・経済に与える影響・対策について解説

2022年2月1日

ハイパーインフレとは?

ハイパーインフレとは「ハイパーインフレーション(英語:hyperinflation)」の略で急速に物価上昇する激しいインフレーションのことです。物価が急速に上昇すると、お金の価値はそれに伴い急速に下落します。

インフレ・デフレについて分からない方・再確認したい方は下記記事をご覧ください。

ハイパーインフレの定義

アメリカの経済学者フィリップD.ケーガン氏(英語:Phillip D. Cagan)によると「インフレ率が毎月50%を超えること」をハイパーインフレの定義としており、国際会計基準では「3年間で累積100%以上の物価上昇」がハイパーインフレと定義されています。

毎月のインフレ率50%が継続すると、1年後には物価が129.75倍に上昇することになり、インフレ率は12875%となります。

インフレ率50%が継続すると、現在米が10kgあたり2,300円で買えると仮定した時、1年後には298,425円となります。比較的安めの米でさえ、インフレ率が50%継続するとたった1年で物価が激しく上昇し、状況が変わっていきます。

ハイパーインフレによる生活・経済への影響

ハイパーインフレは急速に物価上昇する為、給料UPが追いつかなくなります。

出典「ベネズエラニュースサイトEFECTO

上記はベネズエラの最低賃金の推移です。物価上昇に給料UPが追いついていない状態を表しています。すなわちハイパーインフレの状態と言えます。

ベネズエラでは2019年8月の平均最低賃金は260円で、マクドナルドのハンバーガーセットは2019年9月で約300円で提供されていました。僅か1回食事をすると1ヶ月分の給料が無くなってしまいます。結果、働いてもらえる給料よりも生活費の方が上回る為、生活に困窮する状態になります。そして、生活に困窮している人は食べ物を探す為にゴミを漁ったり、強盗などしたりする為治安が悪くなります。

以上よりハイパーインフレによる生活への影響を下記に示します。

  • 物価の急上昇(お金の価値急下落)
  • 給料UPが追いつかない
  • 給料よりも生活費が上回る為、生活に困窮する可能性がある
  • 治安が悪くなる

ハイパーインフレが起こる原因

  • 紙幣大量印刷

歳出や戦争の軍事費等の為に大量に紙幣を印刷しますが、紙幣を印刷するほど通貨価値が暴落します。ハイパーインフレの主因は紙幣印刷によるものとされています。

  • 社会的政治的動揺等

社会的政治的動揺や総供給量の崩壊、政府が税収を集めるのが困難になるような危機等、政府予算に何らかのストレスがかかった場合にハイパーインフレが起こることが多いとされています。

ハイパーインフレの過去事例

ベネズエラ

イギリスBP社調査(2021年版)によると、原油埋蔵量は3038億バレルとなっており、世界シェアの17.5%を占めています。(出典:BP Statistical Reviewof World Energy2021

2021年時点で原油の埋蔵量が最も多い国ベネズエラですが、2015年に原油価格が急落する事態が起きベネズエラ経済が危機に陥りました。インフレ率は2015年98.3%、2016年700%にまで達しました。2018年では169万8,488%まで達しました。先行きの不透明な経済、治安が悪くなったこと等から2019年6月で約400万人以上が国境を越えて南アメリカ各国へ流出したと推測されています。

流通開始当初のレートは1ドル=60ボリバルで取引されていましたが、2020年11月には1ドル=100万ボリバルとなり、更なるベネズエラ経済の悪化やより高額な新紙幣を刷り始めた影響で2021年8月のレートは1ドル=410万ボリバル前後にまで悪化しています。

ハンガリー

ハンガリーでは過去2回ハイパーインフレが発生しています。1回目が1918年第一次世界大戦にオーストリアから独立したハンガリーに激しいインフレが発生しました。2回目は1941年〜1945年の第二次世界大戦後に激しいハイパーインフレが発生しました。1946年から戦後復興による財政出動に充てる為に、政府が大量に通貨を発行したことで物価は上昇(通貨価値は下落)しました。ペンゲーは後期の16年間で貨幣価値が1垓3000京分の1になりました。このインフレーションは1946年前半の半年間に起きたものです。最高額面紙幣で実際に発行されたのは1垓ペンゲーで1垓は10の20乗です。1946年に印刷された10垓ペンゲー紙幣は歴史上の最高額面紙幣でしたが、発行はされませんでした。(ギネスブックにも登録されています)

アルゼンチン

アルゼンチンは20世紀半ば以降、輸入している工業製品を国内生産することで経済発展を目指す「輸入代替工業化政策」を開発政策の柱に据えたが、政府主導によるものであった事等から財政負担が大きく、1980年代にかけて財政赤字が拡大しました。財政赤字の一部は、継続的な借入によるものと中央銀行による通貨増発によって補填されていました。通貨増発により貨幣供給量が増加したことと、金融政策への信認を低下させてインフレ期待を高めました。その結果、1980年代にはインフレ率が高率で推移し、1989年にはインフレ率が5000%近くに達しました。

ハイパーインフレが日本で起こる可能性・対策

ハイパーインフレが今後日本で起こる可能性

実は過去に日本でもハイパーインフレが起きていました。

第二次世界大戦中の日本政府の借入金額は国家財政の約9倍に達していたと言われています。軍事費用は大量の国債で資金を賄っていましたが、太平洋戦争で多くの建物や生産機械を失いました。復興金融金庫から鉄鋼産業や石炭産業に大量の資金が融資された結果として、インフレが発生しました。1947年にはインフレ率が125%になりました。

日本で再びハイパーインフレが起こるとしたら、戦争により建物や生産機械を失ったりする等して政府に対する信用が無くなる出来事が起きて、同時にお金(日本円)の価値が無くなる時です。このような出来事が起きて初めてハイパーインフレが起こると考えられる為、今後日本でハイパーインフレが起こる可能性は極めて低いと言えます。

ハイパーインフレへの対策

今後ハイパーインフレが起こる可能性はゼロではありません。常に起こる可能性があることは念頭に置いておくべきでしょう。そして、万が一ハイパーインフレが起きてしまったらという時の為に対策を取っておく必要があると考えます。

ハイパーインフレの対策案を下記に示します。

  1. 金・プラチナ、外貨建て、不動産(事前対策)
  2. 物々交換
  3. 自給自足
  4. 外国に移住して働く

1.「金」、「プラチナ」、「外貨建て」、「不動産」は、いずれも資産価値が落ちにくいものになり万が一ハイパーインフレが起きてもリスク回避できます。

2.物々交換は自分が持っている物と相手が持っている物でお互いが欲しい物でなければ交換成立しないため現実的ではないと思われます。

3.自給自足は自分で野菜や牛等を育てて、収穫する方法ですが、手間暇かかり現実的ではないと思われます。

4.外国に移住して働くについては1の対策を講じていない方又は2又は3でやり繰りできない時の最終手段となります。

以上皆さんの参考になれば嬉しいです!

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